◆ 【翻訳】チャネル・ファイアーボール製デッキの手引き モダン・エルドラージアグロ
TeamCFB Deck Tech: Modern Eldrazi
By Luis Scott-Vargas 2016年2月6日
http://www.channelfireball.com/articles/teamcfb-deck-tech-modern-eldrazi/
(注:プロツアー『ゲートウォッチの誓い』2日目の前に書かれた記事です)
プロツアーへようこそ!
上に挙げた2ターンキルは、もちろんそこまで現実性があるわけじゃない。でも2ターンで相手を殴り倒す可能性がある、それだけで凄い。実質《古えの墳墓/Ancient Tomb》8枚体制を取れるのは素晴らしく、このデッキは常識を粉砕するような爆発的展開の可能性を秘めているんだ。
これが今回、チーム・チャネル・ファイアーボールで使うことにしたデッキだ(《呪文滑り/Spellskite》と《漸増爆弾/Ratchet Bomb》の採用枚数は、人によって若干ばらつきがあるけどね)。まずはバンクーバーの調整合宿で、デッキ調整に尽力してくれたチームの皆に感謝と称賛の意を表したい。何せこんな怪しい紙束をまとめて、エイリアンの殺戮マシーンみたいなデッキに仕上げてしまったんだからね。
それじゃデッキの解説をしようか。
このデッキの強さの秘密は、この土地3種に尽きる。ウギンの目とエルドラージの寺院の加速は本当にぶっ壊れだし、アーボーグを置くとウギンの目が黒マナを出せるようになって実質2マナ相当、加速したマナは危険な領域へと突入する。エルドラージが2マナとか3マナとか軽くなりだしたらもう手が付けられない。2マナ4/4で手札を引っこ抜いたり、3マナ5/5が速攻で殴りだすのは、モダンですら不条理そのものだ。こうして高速でエルドラージを叩き付けて相手を殴り倒すデッキだね。
ウギンの目があると、エルドラージは2マナ継続的に軽減されるから、毎ターン矢継ぎ早に展開することで4~6マナくらい出しているのと同じ計算になる。ウギンの目とエルドラージの寺院で、2ターン目に《作り変えるもの/Matter Reshaper》2体というのもこのデッキでは普通に起き得る。全く罪作りだ。ウギンの目は《果てしなきもの/Endless One》もちゃんと噛み合う。実質+2/+2されて出てくるね。
デッキには無色、もしくはファイレクシア・マナシンボルのカードしか入っていない関係で、追加で11枚、能力付きの土地を採用することができた。ちらつき蛾の生息地、幽霊街、変わり谷まで搭載できるのは大きく、土地の能力で勝てるゲームもたくさんある。ちらつき蛾は相手のちらつき蛾をブロックするのに最適だし、幽霊街はあらゆるデッキに対して嫌がらせのように効く。変わり谷はそんな2枚と比べると少し見劣りするけれど、それなりにダメージを取れる分、《地盤の際/Tectonic Edge》や《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》よりデッキに合っていると思う。
最初見たときは笑ったかもしれないけれど、環境に存在する《流刑への道/Path to Exile》や《幽霊街/Ghost Quarter》との関係で「基本土地」を2枚採用するのは重要なんだ。荒地があれば、《血染めの月/Blood Moon》が出て周りが山だらけになっても、無色マナを捻出することができる。
次はデッキのイカれたメンバーを紹介するぜ!エルドラージのミミックは単体だと最弱だけど、ウギンの目があれば全くのノーコストで出てくるし、爆発的な怒涛の攻勢には大体ミミックが一枚噛んでいる。《現実を砕くもの/Reality Smasher》はこの中でも最高の打撃力を誇るから、4ターン目以降はずっとこいつをトップしたい。《難題の予見者/Thought-Knot Seer》は、通常の勝ち筋から軸をずらした、いわゆる「アンフェア・デッキ」と戦うのに必須で、手札破壊で相手のコンボ速度を落としてくれる。普通のデッキ相手でも、早いターンに出れば超強力。《作り変えるもの/Matter Reshaper》と《果てしなきもの/Endless One》は一軍のエースではないものの、軽くて中々のサイズだ。
ここに挙げた4種は全て、刺さるカードはそれぞれ違うものの、速い環境で必須となる除去や妨害手段だ。今紹介しているこのエルドラージアグロも大概速いけれど、更に速度で上回るデッキも存在するし、ブロッカーをどかす目的でも重要だ。虚空の杯は基本的にX=1で置くけれど、親和や《死せる生/Living End》相手にはX=0で置く。序盤以降の杯はX=2で置くのも悪くないものの、X=2だとこちらにも被害が出るから要注意だ。
《四肢切断/Dismember》と《漸増爆弾/Ratchet Bomb》は除去枠。漸増爆弾は超強力なカードってわけじゃないけど、あるのとないのとでは感染や親和との相性が大違い。呪文滑りは除去避けで、感染や呪禁オーラには劇的に効く。
インチキくさい展開を可能にする、第二の加速エンジンがこちら。1ターン目に虚空の杯をX=1で置くのは卑怯レベル。それに難題の予見者や現実を砕くものを1ターン早く着地させるのもほとんどいじめ。極めつけに、フルタップ状態から指導霊を追放して四肢切断を撃つことまでできてしまう。汚いな流石ゴリラ汚い。全力疾走するためのカードだから、終盤引いたら大惨事だけど、ま、こういう理不尽なデッキを選択するって事は、リスクも織り込み済みだよね。
ゲームプラン
このデッキのゲームプランは実にシンプルだ。デカい強い奴をできるだけ早く盤面に叩きつけ、必要に応じて相手を妨害する。それだけ。たまに虚空の杯や呪文滑り、漸増爆弾を先に置かなければならないときもあるけれど、大抵はまず展開して、その後に妨害手段を使う方がいい。《難題の予見者/Thought-Knot Seer》は、4/4というプレッシャーの分、最高の妨害手段だし、《現実を砕くもの/Reality Smasher》は相手のライフを砕くのに最適だ。
ブン回ったときのこのデッキは、まさに壊れ。2ターン目や3ターン目に、5~7マナ分の展開をするのだから、理不尽の体現にすら思えるだろう。しかもこのデッキの土地はマナを出すだけでなく、ほぼ全てにマナ以外の能力がついているから、展開し終わった後も土地を使って暴れられるんだ。
2マナ相当の土地である、ウギンの目もしくはエルドラージの寺院が引けないとき、あるいはドローが噛み合わずちぐはぐな手札になってしまい、苦境に立たされることもある。戦犯筆頭は猿人の指導霊だけど、他にも虚空の杯や伝説の土地を複数枚引いてしまったり、土地がウギンの目やアーボーグしかない、なんて手札が来ることもある。頻繁に起きる事故ではないけれど、ぶっ飛んだ展開が可能な代償として、たまにどうしようもない、何もできない手札が来てしまうというのは、コインの裏表ってことだね。
サイドボード
サイドにも無色のカードしか取れない都合上、あまり選択肢は多くない。《忘却蒔き/Oblivion Sower》はガッチリしたサイズが頼もしいし、《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》は間単に唱えられて強力な墓地対策だ。《はらわた撃ち/Gut Shot》に、追加の《爆弾部隊/Bomber Corps》、《呪文滑り/Spellskite》、《歪める嘆き/Warping Wail》は追加の除去で、《真髄の針/Pithing Needle》は多種多様なパーマネントに対する回答だね。
このデッキは使っていて超面白いし、とにかく強い。おかげでプロツアー初日、チームの戦績は驚異的だった(勝率68%。もっともチーム20人のうち3人は違うデッキを使ったけれど)。2日目もこの調子で勝ち進みたいね。皆も是非使ってみてくれ。
LSV
TeamCFB Deck Tech: Modern Eldrazi
By Luis Scott-Vargas 2016年2月6日
http://www.channelfireball.com/articles/teamcfb-deck-tech-modern-eldrazi/
(注:プロツアー『ゲートウォッチの誓い』2日目の前に書かれた記事です)
1ターン目からの
《ウギンの目/Eye of Ugin》
《エルドラージのミミック/Eldrazi Mimic》
《エルドラージのミミック/Eldrazi Mimic》
《エルドラージのミミック/Eldrazi Mimic》
2ターン目
《エルドラージの寺院/Eldrazi Temple》
《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide》
《現実を砕くもの/Reality Smasher》 ウィーントキィ
プロツアーへようこそ!
上に挙げた2ターンキルは、もちろんそこまで現実性があるわけじゃない。でも2ターンで相手を殴り倒す可能性がある、それだけで凄い。実質《古えの墳墓/Ancient Tomb》8枚体制を取れるのは素晴らしく、このデッキは常識を粉砕するような爆発的展開の可能性を秘めているんだ。
土地
4:《エルドラージの寺院/Eldrazi Temple》
4:《ウギンの目/Eye of Ugin》
3:《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》
4:《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》
4:《幽霊街/Ghost Quarter》
3:《変わり谷/Mutavault》
2:《荒地/Wastes》(コレクター番号184のフルアートを使おう)
クリーチャー
4:《エルドラージのミミック/Eldrazi Mimic》
4:《作り変えるもの/Matter Reshaper》
4:《果てしなきもの/Endless One》
4:《難題の予見者/Thought-Knot Seer》
4:《現実を砕くもの/Reality Smasher》
呪文
4:《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide》
4:《四肢切断/Dismember》
4:《虚空の杯/Chalice of the Void》
2:《呪文滑り/Spellskite》
2:《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
サイドボード
4:《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
3:《はらわた撃ち/Gut Shot》
3:《忘却蒔き/Oblivion Sower》
2:《真髄の針/Pithing Needle》
1:《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
1:《呪文滑り/Spellskite》
1:《歪める嘆き/Warping Wail》
これが今回、チーム・チャネル・ファイアーボールで使うことにしたデッキだ(《呪文滑り/Spellskite》と《漸増爆弾/Ratchet Bomb》の採用枚数は、人によって若干ばらつきがあるけどね)。まずはバンクーバーの調整合宿で、デッキ調整に尽力してくれたチームの皆に感謝と称賛の意を表したい。何せこんな怪しい紙束をまとめて、エイリアンの殺戮マシーンみたいなデッキに仕上げてしまったんだからね。
それじゃデッキの解説をしようか。
《エルドラージの寺院/Eldrazi Temple》
《ウギンの目/Eye of Ugin》
《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》
このデッキの強さの秘密は、この土地3種に尽きる。ウギンの目とエルドラージの寺院の加速は本当にぶっ壊れだし、アーボーグを置くとウギンの目が黒マナを出せるようになって実質2マナ相当、加速したマナは危険な領域へと突入する。エルドラージが2マナとか3マナとか軽くなりだしたらもう手が付けられない。2マナ4/4で手札を引っこ抜いたり、3マナ5/5が速攻で殴りだすのは、モダンですら不条理そのものだ。こうして高速でエルドラージを叩き付けて相手を殴り倒すデッキだね。
ウギンの目があると、エルドラージは2マナ継続的に軽減されるから、毎ターン矢継ぎ早に展開することで4~6マナくらい出しているのと同じ計算になる。ウギンの目とエルドラージの寺院で、2ターン目に《作り変えるもの/Matter Reshaper》2体というのもこのデッキでは普通に起き得る。全く罪作りだ。ウギンの目は《果てしなきもの/Endless One》もちゃんと噛み合う。実質+2/+2されて出てくるね。
《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》
《変わり谷/Mutavault》
《幽霊街/Ghost Quarter》
デッキには無色、もしくはファイレクシア・マナシンボルのカードしか入っていない関係で、追加で11枚、能力付きの土地を採用することができた。ちらつき蛾の生息地、幽霊街、変わり谷まで搭載できるのは大きく、土地の能力で勝てるゲームもたくさんある。ちらつき蛾は相手のちらつき蛾をブロックするのに最適だし、幽霊街はあらゆるデッキに対して嫌がらせのように効く。変わり谷はそんな2枚と比べると少し見劣りするけれど、それなりにダメージを取れる分、《地盤の際/Tectonic Edge》や《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》よりデッキに合っていると思う。
《荒地/Wastes》
最初見たときは笑ったかもしれないけれど、環境に存在する《流刑への道/Path to Exile》や《幽霊街/Ghost Quarter》との関係で「基本土地」を2枚採用するのは重要なんだ。荒地があれば、《血染めの月/Blood Moon》が出て周りが山だらけになっても、無色マナを捻出することができる。
《エルドラージのミミック/Eldrazi Mimic》
《作り変えるもの/Matter Reshaper》
《難題の予見者/Thought-Knot Seer》
《現実を砕くもの/Reality Smasher》
《果てしなきもの/Endless One》
次はデッキのイカれたメンバーを紹介するぜ!エルドラージのミミックは単体だと最弱だけど、ウギンの目があれば全くのノーコストで出てくるし、爆発的な怒涛の攻勢には大体ミミックが一枚噛んでいる。《現実を砕くもの/Reality Smasher》はこの中でも最高の打撃力を誇るから、4ターン目以降はずっとこいつをトップしたい。《難題の予見者/Thought-Knot Seer》は、通常の勝ち筋から軸をずらした、いわゆる「アンフェア・デッキ」と戦うのに必須で、手札破壊で相手のコンボ速度を落としてくれる。普通のデッキ相手でも、早いターンに出れば超強力。《作り変えるもの/Matter Reshaper》と《果てしなきもの/Endless One》は一軍のエースではないものの、軽くて中々のサイズだ。
《虚空の杯/Chalice of the Void》
《四肢切断/Dismember》
《呪文滑り/Spellskite》
《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
ここに挙げた4種は全て、刺さるカードはそれぞれ違うものの、速い環境で必須となる除去や妨害手段だ。今紹介しているこのエルドラージアグロも大概速いけれど、更に速度で上回るデッキも存在するし、ブロッカーをどかす目的でも重要だ。虚空の杯は基本的にX=1で置くけれど、親和や《死せる生/Living End》相手にはX=0で置く。序盤以降の杯はX=2で置くのも悪くないものの、X=2だとこちらにも被害が出るから要注意だ。
《四肢切断/Dismember》と《漸増爆弾/Ratchet Bomb》は除去枠。漸増爆弾は超強力なカードってわけじゃないけど、あるのとないのとでは感染や親和との相性が大違い。呪文滑りは除去避けで、感染や呪禁オーラには劇的に効く。
《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide》
インチキくさい展開を可能にする、第二の加速エンジンがこちら。1ターン目に虚空の杯をX=1で置くのは卑怯レベル。それに難題の予見者や現実を砕くものを1ターン早く着地させるのもほとんどいじめ。極めつけに、フルタップ状態から指導霊を追放して四肢切断を撃つことまでできてしまう。汚いな流石ゴリラ汚い。全力疾走するためのカードだから、終盤引いたら大惨事だけど、ま、こういう理不尽なデッキを選択するって事は、リスクも織り込み済みだよね。
ゲームプラン
このデッキのゲームプランは実にシンプルだ。デカい強い奴をできるだけ早く盤面に叩きつけ、必要に応じて相手を妨害する。それだけ。たまに虚空の杯や呪文滑り、漸増爆弾を先に置かなければならないときもあるけれど、大抵はまず展開して、その後に妨害手段を使う方がいい。《難題の予見者/Thought-Knot Seer》は、4/4というプレッシャーの分、最高の妨害手段だし、《現実を砕くもの/Reality Smasher》は相手のライフを砕くのに最適だ。
ブン回ったときのこのデッキは、まさに壊れ。2ターン目や3ターン目に、5~7マナ分の展開をするのだから、理不尽の体現にすら思えるだろう。しかもこのデッキの土地はマナを出すだけでなく、ほぼ全てにマナ以外の能力がついているから、展開し終わった後も土地を使って暴れられるんだ。
2マナ相当の土地である、ウギンの目もしくはエルドラージの寺院が引けないとき、あるいはドローが噛み合わずちぐはぐな手札になってしまい、苦境に立たされることもある。戦犯筆頭は猿人の指導霊だけど、他にも虚空の杯や伝説の土地を複数枚引いてしまったり、土地がウギンの目やアーボーグしかない、なんて手札が来ることもある。頻繁に起きる事故ではないけれど、ぶっ飛んだ展開が可能な代償として、たまにどうしようもない、何もできない手札が来てしまうというのは、コインの裏表ってことだね。
サイドボード
サイドにも無色のカードしか取れない都合上、あまり選択肢は多くない。《忘却蒔き/Oblivion Sower》はガッチリしたサイズが頼もしいし、《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》は間単に唱えられて強力な墓地対策だ。《はらわた撃ち/Gut Shot》に、追加の《爆弾部隊/Bomber Corps》、《呪文滑り/Spellskite》、《歪める嘆き/Warping Wail》は追加の除去で、《真髄の針/Pithing Needle》は多種多様なパーマネントに対する回答だね。
このデッキは使っていて超面白いし、とにかく強い。おかげでプロツアー初日、チームの戦績は驚異的だった(勝率68%。もっともチーム20人のうち3人は違うデッキを使ったけれど)。2日目もこの調子で勝ち進みたいね。皆も是非使ってみてくれ。
LSV
コメント
>インチキくさい展開を可能にする、第二の加速エンジンがこちら。
とんでもなくわかりやすい、間違っているけど確定的に正解な意訳に大草原不可避。翻訳ってやっぱりセンスですよね。
楽しんでいただけたようで、コメントありがとうございます!
原文が遊んでいるところは、日本語でも何とか笑いを取りたいですね。面白さを伝えるのも、翻訳の醍醐味の一つと信じているので……
ちなみに「エンジン」の部分は、英語でも言葉遊びがされていて、"monkey business"(悪ふざけとかインチキの意味)を猿人とひっかけていたので、日本語でも遊んでみました。
理解していただけたらこんなに嬉しいことはありません!