前編はこちら
http://misdirection.diarynote.jp/201510192341125296/



 この新マナ基盤で、たった3色しか使わないのは馬鹿げている。仮に下のようなマナ基盤を採用したとしよう:
 2:《山/Mountain》
 2:《島/Island》
 2:《平地/Plains》
 4:《神秘の僧院/Mystic Monastery》
 4:《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
 4:《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》
 4:《汚染された三角州/Polluted Delta》
 1:《大草原の川/Prairie Stream》
 1:《燻る湿地/Smoldering Marsh》

 《燻る湿地/Smoldering Marsh》は赤黒の土地だが、《汚染された三角州/Polluted Delta》で赤い土地を持ってくるのに必要だ。全体的に強固なジェスカイのマナ基盤といえるが、この時点で既に黒マナソースが9枚もある。さらに《窪み渓谷/Sunken Hollow》を1枚足してやれば14枚になる。新スタンダードで、ぴったり3色だけを使うのは無駄が多い。お分かりいただけただろうか。
 
 ジェスカイに黒でなく緑をタッチすることも考えた。《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》と《棲み家の防御者/Den Protector》はどちらも強力だったが、突き詰めると黒をタッチする方が得られるものが大きい。黒をタッチすると、《はじける破滅/Crackling Doom》、《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang》、それに《強迫/Duress》が使えるようになるのだ。
 
 クリーチャー枠はすんなり決まった:
 4:《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》//《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》
 2:《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》
 4:《カマキリの乗り手/Mantis Rider》
 2:《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang》
 1:《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》
 1:《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》

 取り立てて革新的なことはない。前回のプロツアーで使ったジェスカイと違って、このデッキは攻めの姿勢でガンガンいくのでなく、どちらかというとコントロールのように振る舞うことが多い。《カマキリの乗り手/Mantis Rider》は使わないと勿体ないほど強力だし、《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang》はフェッチランド、ジェイス、軽い火力などとの相性が抜群だ。
 
 考えなければならないこととして、軽い除去が何枚必要かということと、どの除去を選択するかというのが最初の問題だった。《乱撃斬/Wild Slash》は本体に撃ち込めるし、忠誠度を上げずにフラッシュバックを使った《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》を倒すことができる。しかし一方、《焦熱の衝動/Fiery Impulse》だと魔巧を達成するのが簡単な上、3点のダメージを狙えるのがとても大きい。特に《カマキリの乗り手/Mantis Rider》に対して効果的だ。
 
 合計で5枚採用することにして、内訳は《乱撃斬/Wild Slash》3枚と《焦熱の衝動/Fiery Impulse》2枚に決めた。《はじける破滅/Crackling Doom》はどんなときどんな相手にも大体強いので、4枚以下にする理由がない。悲しいことに、《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm》は割を食うことになってしまった。昔のジェスカイで使う魔除けは格別だったが、《カマキリの乗り手/Mantis Rider》とはじける破滅をしっかり取ると、それ以上3マナの呪文をたくさん入れることは正当化できない。それでもジェイスのフラッシュバック対象として優秀なので、結局魔除けも1枚は採用することにした。全員が全員フェッチランドをガン積みするなら、ライブラリーのトップに戻すモードは確定除去のように使える。特に《死霧の猛禽/Deathmist Raptor》に対して有効だ。
 
 上でこのデッキはコントロールらしく振る舞うと書いたけれど、普通コントロールデッキはプレインズウォーカーやドロー手段を核として構築することが多い。だけどこのデッキはプレインズウォーカーもドローも目立って採用していない。デッキを4色にすることによって、《オジュタイの命令/Ojutai’s Command》と《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》を採用することが可能になった。どちらも《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》や《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》との組み合わせが強力だが、《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》も命令と組んでカチコミをかける戦闘員だ。多色ミラーのマッチは相当数あると踏んでいたが、そういったマッチはリソースの削りあいに終始することが多い。コラガンの命令で相手のジェイスを倒しつつ、こっちのジェイスを回収するのは本当に本当に強力だ。土地が6枚並んだら、後は6枚の命令とジェイスを使って、のけ者を戻し続けるだけ。見た目よりずっとしぶとい奴だよ。
 
 調整中、《払拭/Dispel》がそこそこの数とられることを見越して、《時を越えた探索/Dig Through Time》をやめて《宝船の巡航/Treasure Cruise》にするべきか検討した。しかし、払拭を入れてくるような相手には6枚の命令サイクルが突き刺さるし、命令自体、払拭のいい的なのだから、より強力なカードである探索を使おうという結論になった。また相手の払拭を懸念するのとまったく同じ理由で、こっちも払拭を採用することにした。《時を越えた探索/Dig Through Time》、《強大化/Become Immense》、命令、《勇敢な姿勢/Valorous Stance》、《アブザンの魔除け/Abzan Charm》、《究極の価格/Ultimate Price》と、スタンダードでメジャーなデッキを見回してみて、払拭の対象には事欠かないのが分かるだろうか。黒緑生贄コンボデッキですら、4枚の《集合した中隊/Collected Company》を採用している。払拭があれば、デッキで一番強いカードである中隊を消せるのだ。
 
 そんな経緯を経て、このリストが完成した:
 ダークジェスカイ
 
 土地
 4:《神秘の僧院/Mystic Monastery》
 4:《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
 4:《汚染された三角州/Polluted Delta》
 4:《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》
 1:《平地/Plains》
 1:《島/Island》
 2:《山/Mountain》
 1:《沼/Swamp》
 1:《大草原の川/Prairie Stream》
 2:《窪み渓谷/Sunken Hollow》
 2:《燻る湿地/Smoldering Marsh》
 
 クリーチャー
 4:《カマキリの乗り手/Mantis Rider》
 2:《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》
 4:《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》//《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》
 2:《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang》
 1:《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》
 1:《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》
 
 呪文
 2:《時を越えた探索/Dig Through Time》
 1:《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm》
 3:《乱撃斬/Wild Slash》
 3:《オジュタイの命令/Ojutai’s Command》
 4:《はじける破滅/Crackling Doom》
 3:《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》
 2:《払拭/Dispel》
 2:《焦熱の衝動/Fiery Impulse》
 
 サイドボード
 2:《強迫/Duress》
 1:《フェリダーの仔/Felidar Cub》
 1:《宝船の巡航/Treasure Cruise》
 3:《アラシンの僧侶/Arashin Cleric》
 2:《影響力の行使/Exert Influence》
 1:《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》
 3:《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
 1:《払拭/Dispel》

 《強迫/Duress》はミラーマッチやコントロールデッキ用。《フェリダーの仔/Felidar Cub》は、サイドボード後、白緑系のデッキが《絹包み/Silkwrap》や《進化の飛躍/Evolutionary Leap》を入れてくることを見越してのサイド。《消去/Erase》とネコとどっちがいいかは微妙なラインだったが、6枚の命令があるならクリーチャーのがいいだろうという結論に落ち着いた。《影響力の行使/Exert Influence》、《宝船の巡航/Treasure Cruise》、追加の《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》と払拭は、低速なデッキやリソースを削りあうマッチのときに入れる。《アラシンの僧侶/Arashin Cleric》と《光輝の炎/Radiant Flames》は、赤系のデッキを相手取るとき用だが、赤系相手は、メインデッキのままでも結構いけると思う。お客様とまではいかないにしてもね。
 
 《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》は、アブザンやコントロール全般相手に投入する。《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》は絶対に打ち消さなくてはならない。できれば見たくないカードだ。ウギンの着地を許すな。
 
 チーム内でのメタゲームの予想だが、ジェスカイブラックと白緑が2大勢力で、《アタルカの命令/Atarka’s Command》・《強大化/Become Immense》を擁する赤系デッキがそれに続くと考えた。他にも4色から強いカードだけをあれこれつまめることを考えると、デッキの選択肢として優秀なのはいくらでもある。しかし上の3つが代表選手になると思った。どれも単体で見て強く、また他の2つに対して3すくみのようにならない。つまりメジャーなデッキに突かれるような弱点がなかったのが理由だ。白緑系のデッキはジェイスやカマキリの乗り手、他のシステムクリーチャーを処理するのに、絹包みに頼らなければならないが、プロツアーでは当たり前のように使われるだろう。
 
 赤単系のデッキや白緑に対しては、コントロールデッキとして戦うのでリソースを削ることに心を砕くことになるだろう。大変異は面倒だが、命令、ジェイス、時を越えた探索を駆使すれば十分勝てるマッチアップだ。赤系を相手にするときは、リソースをぶつけ合って相殺して、こちらの強いカードが相手を抑え込めれば良し。赤系といっても、火力は4~6枚の軽い火力と2枚程度の《極上の炎技/Exquisite Firecraft》に留めてくると予想しているので、本体火力を連発されて危機に陥ることはあまりないと読んでいる。代わりに単体除去を構えて、コンボでとどめを刺されないように注意したい。その点我々の作ったダークジェスカイは、《はじける破滅/Crackling Doom》、《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm》、《払拭/Dispel》とコンボに対して劇的にきくカードで武装している。《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》を命令で回収するのも素晴らしいし、サイドボード後には《アラシンの僧侶/Arashin Cleric》まで戻すことができる。
 
 チーム・パンテオンの多くがこのリストを使う予定だが、ジェイスを唱えつつ《はじける破滅/Crackling Doom》へ繋げることを考えると、若干マナが安定しないこともある。しかしマナ基盤としては十分だし、デッキは相当強力に仕上がった。しばらくパッとしない戦績が続いていたから、今回は少し上の方に食い込みたい。このデッキなら、やれると思う。

コメント

VM
2015年10月20日23:45

とても読みやすく、参考になりました。
翻訳お疲れ様です!

KenxKen
2015年10月21日10:31

翻訳お疲れ様でした!
大変参考になりました。ありがとうございます!!

nophoto
傍観者
2015年10月21日13:31

ギデオン不採用についてはコメント欄でも議論されていないでしょうか?
ダブルシンボルがきついってことなんですかね。

ろすす
2015年10月21日21:05

自分で原文を読むと細かいニュアンスが抜けた理解になってしまうので、Taku先生の翻訳は助かります。

Taku
2015年10月21日23:02

> VMさん

あざす!コメントいただけて嬉しいです!

> KenxKenさん

良かったです。あのカイ・ブッディの説明というのがまたオツですね。

> 傍観者さん

明言はされていないのですが、白白のダブルシンボルを嫌った感はあります。
あまり不採用のカードに触れていないのが勿体ないですね。

> ろすすさん

MTGプレイヤーは、むしろ荒削りで武骨な文体のが好きかなと思うことがたまにあるので、ニュアンス楽しんでもらえて嬉しいです。原文ストレートより、しつこくても意味が伝わることを心がけてます。

PradoRed
PradoRed
2016年1月10日20:17

だいぶ遅ればせながらスタン復帰にあたって参考にさせて頂きました。
様々なシナジー要素が詰め込まれたデッキなので流行りのレシピを見ても何が軸なのかイマイチはっきりしなかったので、初期に書かれた記事はやはり参考になります。

末期のDジェスカイはカマキリ抜いてコントロール部分を追求したレシピもあったようで、原文の"Mantis Riders are still way~"というのもカマキリ自体がDジェスカイの本来の軸には合致してないことを予見して「~とはいえ」というニュアンスを含んでいたのではないかと思いました。

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