◆ 【翻訳】フランクに考えよう タルキール覇王譚、ピック順位表
 
 Frank Analysis - A Pick Order List for Khans of Tarkir Draft
 
 By Frank Karsten 2014年10月21日
 
 http://www.channelfireball.com/articles/frank-analysis-a-pick-order-list-for-khans-of-tarkir-draft/
 
 タルキール覇王譚ドラフトは最高だ。変異メカニズムはよく練りこまれてるし、カードパワーと色安定を天秤にかけるのも面白い。しかも色々なデッキが組めて、そのどれもが有効に働くなんてね。たとえばプロツアーで、アリ・ラックス(Ari Lax)が5色変異デッキを組む一方で、スタニスラフ・ツィフカ(Stanislav Cifka)は2色のビートダウンデッキを目指して、そのどちらもが5-1以上の成績を収めるなんて凄いことだ。
 
 個人的には安定した色供給の見込めるデッキが好みだけれど、タルキール覇王譚のリミテッドは、皆の意見が合致しないどころか真っ二つな、近年稀にみる環境といっていいだろう。あまりに多くのアプローチがあるもので、カードの評価どころか、アーキタイプの好みやピック優先度、あらゆる面で、合意に至るのが難しい。素晴らしい!環境にはまだまだ未知の領域があるということだから、研究が進んでも依然、新鮮な気持ちでプレイできることだろう。
 
 しかし上で言ったようなことは、裏返すと、決定版となる評価を今日の記事でお見せするのはまず不可能、ということでもある。代わりにお見せするのは、チーム・キャビン・クルー(team Cabin Crew)で共有されている大まかな評価といったところだ。チーム名の由来は、森の中の小屋(キャビン)でドラフト練習をするのにちなんでつけたんだけどね。大体15~20回くらいやったところで、出た結論はこんな具合だ:
 
最強色は青。タフネスの高いクリーチャーが多く、ゲームが膠着しやすいので突破手段が必要。こと突破手段にかけて、《隠道の神秘家/Mystic of the Hidden Way》のような回避能力持ちや、《悪寒/Crippling Chill》のようなカードを擁する青に勝る色はない。
最弱色は黒。《消耗する負傷/Debilitating Injury》は優秀だし《スゥルタイのゴミあさり/Sultai Scavenger》も悪くないが、全体的に黒のコモンはパッとしない。ドラフト合宿でも、黒の勝率が一番低かった。
2色で充実したマナ基盤とマナカーブを備えたビートダウンが組めれば、それが最強だと思う(たとえば2マナクリーチャー4枚、変異込みで3マナが7枚、4マナが4枚、5マナが1枚、それに6枚の呪文とか)。デッキを2色で組むなら、土地を早めに確保する必要はない。展開の遅れる原因になる、タップ状態で場に出る土地を数多く採用する必要もなければ、そもそも色事故することも少なくなる。マナに悩まされないなら、マナカーブを整えて、膠着状態を突破する手段の確保に心を砕いていればいい。2色アグロが組めれば、立ち上がりが遅くマナに不安を抱えるデッキを簡単に蹂躙することができる。ドラフト練習中の記録では、2色デッキの勝率は55%で、3色デッキの50%、4色以上の45%に差をつけた。
色安定を図れる土地が数枚あるなら、2色に1色タッチして3色デッキにするのは全く問題ない。タッチするのは変異クリーチャーなら尚良し。ほとんどのデッキは2色タッチ1色に落ち着くことが多かった。マナといえば、メインカラーの供給源は8~10枚くらいを目安にしたい。2マナ域が複数枚あるなら9枚は欲しいところだし、ダブルシンボルのカードがあるなら10枚は入れたい。タッチカラーの供給源は2~5枚程度用意したい(変異クリーチャーを1,2枚タッチする程度なら2枚でいいし、タッチしたいカードが複数枚あるなら5枚は欲しい)。典型的な9:8:4くらいのマナ基盤を構築するには、9+8+4ということで、合計21のシンボルを集める必要がある。2色土地が3枚取れていれば、後は基本土地15枚で達成可能だ。頑張ってこのくらいを目指したい。
大体のデッキで土地は18枚必要。3ターン目には絶対変異クリーチャーを出したいし、5ターン目には変異解除を狙いたい。もし5枚目の土地が置けなかった場合、展開的にかなり後手に回ってしまうことになる。
2マナクリーチャーは重要。こちらに戦闘できるクリーチャーがいて相手が何も展開しなければ、マナをより有効活用できるし、ダメージレースでも先んじることができる。3ターン目や4ターン目の行動は、大体変異クリーチャーをお互いに出し合うことになるから、2/1バニラだろうとそれより前のターンに出していれば有利に立つことができる。
2色のビートダウンデッキを組むなら、膠着状態を突破するカードが必要という話を上でしたけれど、今一度強調しておきたい。序盤からマナカーブに沿って、2/2だの変異だのを並べて相手のライフを削ることはできるが、2/5とか3/6とか高タフネスクリーチャーが環境には溢れている。ビートダウンを組むときは、そんなクリーチャーを押しのけて、ゲームを終了に持っていく手段が複数必要だ。《矢の嵐/Arrow Storm》や《道極め/Master the Way》をプレイヤーに撃って焼き尽くしたり、《悪寒/Crippling Chill》や《反逆の行動/Act of Treason》でブロッカーをどかすとかの工夫が必要。あるいは飛行などの回避能力持ちを多めに採用するとかでもいい。手段は問わないが、こういうカードが大量に必要で、この詰めが一番得意な色は青なんだ。
勝率を見てみると、2色の中では青緑が最強で、氏族で見るとティムールの勝率が一番高かった。
2色の組み合わせだと、対抗色(赤白、青緑、白黒、黒緑、青赤)で取ると2つの氏族に行けて、友好色だと1つの氏族に固定されるのと比べて優れている。何より、優良多色カードを使える強みがある。それでも、友好色をやってもいい場合もある。たとえば1パック目、緑だけを取って、次のパックで《風番いのロック/Wingmate Roc》を取って、アブザンカラーの土地を取れないときとかね。
テンポが中心の環境なので、変異は表で出すのが正解な場合もままある。表で出せるだけのマナがあって、今から出そうとするクリーチャーが手札の最後の一枚(土地でないカードの最後の一枚)なら、大体私は表で出すことにしている。変異クリーチャーを評価するときは、表と裏の性能をじっくり見比べるようにしたい。
ピックとは関係ないけれど、相手が3ターン目、4ターン目と続けて変異クリーチャーを出してきたら、通常最初に出てきた方が序盤の戦闘で相討ちになっても構わない奴で、後に出た方が強い変異なことが多い。ブロックするときや、除去を撃つときはそのことを心の片隅に留めておこう。
5色デッキをドラフトするのは私の好みではないが、序盤グチャったときの予備プランとしては良いだろう。たとえば最初の6ピックで、土地2枚と異なる氏族の多色カード4枚を取ってしまったとかなら、そこから見た土地は全部取る不動産屋を開業して、5色を何とか形にするというのは、そこからできる救済策としては上々だ。

 
 この環境のドラフトの指針としてはこんな具合だ。参考までに記録を申し添えておくと、チーム・キャビン・クルーがプロツアーのブースター・ドラフト部門で出した成績は、計43勝23敗だった。案外環境を把握できていたのかもしれない。
 
 というわけで、ピック順位表を見ていこう。このリストはタルキール覇王譚×3のドラフトで、1パック目の1ピック目にカード取る際、全カードを評価順に並べたもので、ゲーム中の強さに基づいた順位表だ。金銭的価値は計算に入ってない。読みやすくなるよう、いくつかの塊に分けてあるけれど、連続した一つの表と思って読んでくれて一向に構わない。
 
最強格のレア・神話レア
 《風番いのロック/Wingmate Roc》
 《アラシンの上級歩哨/High Sentinels of Arashin》
 《灰雲のフェニックス/Ashcloud Phoenix》
 《龍語りのサルカン/Sarkhan, the Dragonspeaker》
 《幽霊火の刃/Ghostfire Blade》
 《砂塵破/Duneblast》
 《真珠の達人/Master of Pearls》
 《千の風/Thousand Winds》
 《頭巾被りのハイドラ/Hooded Hydra》
 《サグのやっかいもの/Sagu Mauler》
 《爪鳴らしの神秘家/Rattleclaw Mystic》
 《ケルゥの呪文奪い/Kheru Spellsnatcher》
 《嘲る扇動者/Jeering Instigator》
 《不気味な腸卜師/Grim Haruspex》

 あらゆるコモンやアンコモンより優先して取るカードたち。白の3/4飛行がセット内最強のカードで、続いて赤の極めて除去しづらい飛行クリーチャーが続く。《幽霊火の刃/Ghostfire Blade》は、トップ4の飛行クリーチャーどもほど強くはないかもしれないが、ちょっとのマナで変異を強大なクリーチャーに変貌させられる。それに1-1ではもっと重要な要素として、色選択を先延ばしにできて、かつ必ずデッキに入る強力なカードが手に入るというのが大きい。
 
 《砂塵破/Duneblast》は、多色カードで、黒を含んでいて、7マナもかかるというスリーストライクでも尚、バッターアウトにならない強力無比なカード。欠点はあるものの、唱えることさえできれば大体ゲームに勝てるだろう。見たらすぐに確保して、遅めのコントロールデッキでタッチでも何でもいいからとにかく使いたい。
 
 レアの変異は、マナカーブに沿って表で出しても申し分ないものの、変異状態で出して解除した方が強いクリーチャーばかりだ。裏向きで出して変異解除すれば、まず対戦相手の不意を突けるだろう。コモンの変異はケアしてプレイされても、レアの変異まで考えてプレイする人はまずいない。戦闘で敵軍を大いに壊滅させてやることが可能だ。
 
 《爪鳴らしの神秘家/Rattleclaw Mystic》、《ケルゥの呪文奪い/Kheru Spellsnatcher》、《嘲る扇動者/Jeering Instigator》、《不気味な腸卜師/Grim Haruspex》がこれほど高く評価されるというのは確かに疑わしくて、表を作った当初は、この4枚の代わりにトップクラスのアンコモンが入っていた。でも、お尋ね者の危険人物として、トップ層と一緒に面を覚えてもらいたかったのと、この4枚の変異には驚かされてばかりだということにも触れたかったので、こちらに入れることにした。どれも表で出して強いものだから、無色のアーティファクトのように手堅い。たとえばデッキがジェスカイカラーになったとしても、初手に取った《爪鳴らしの神秘家/Rattleclaw Mystic》は色マナを供給してくれるし、《不気味な腸卜師/Grim Haruspex》なら《陰鬱な僻地/Dismal Backwater》や《遊牧民の前哨地/Nomad Outpost》で容易にタッチすることが可能だ。
 
最強クラスのアンコモン
 《残忍な切断/Murderous Cut》
 《マルドゥの心臓貫き/Mardu Heart-Piercer》
 《アブザンの鷹匠/Abzan Falconer》
 《氷羽のエイヴン/Icefeather Aven》
 《弧状の稲妻/Arc Lightning》
 《荒野の後継者/Heir of the Wilds》
 《吠える鞍暴れ/Bellowing Saddlebrute》
 《道の探求者/Seeker of the Way》
 《停止の場/Suspension Field》
 《松歩き/Pine Walker》

 上から3枚は実質《剣を鍬に/Swords to Plowshares》、《火炎舌のカヴー/Flametongue Kavu》、《不可思議/Wonder》みたいなものだ。……当時のことは知らないけれど、どいつも壊れだったと聞いたよ。
 
 4位の《氷羽のエイヴン/Icefeather Aven》は多色カードとはいえ、(《サグのやっかいもの/Sagu Mauler》にも通ずるが)青緑という最強色の組み合わせだし、変異で出しても表で出しても素晴らしいから、単色のカードを差し置いて手を伸ばす価値があると思う。
 
 トップアンコモンはそのくらいにして、初手これから初めて何ら申し分ない、というような単色のカードもたくさんある。2マナ域が大事というのは覚えておいてくれ。
 
青のコモン・アンコモントップ5
 《隠道の神秘家/Mystic of the Hidden Way》
 《ジェスカイの風物見/Jeskai Windscout》
 《霧炎の織り手/Mistfire Weaver》
 《悪寒/Crippling Chill》
 《氷河の末裔/Scion of Glaciers》

 次は強コモンなんだけど、私の好みが青の回避能力デッキということもあって、何と5枚全部が青い。
 
 《隠道の神秘家/Mystic of the Hidden Way》が青の最強コモンというのは、おそらく意見が分かれるところだと思う。色の好みを計算に入れなければ、《消耗する負傷/Debilitating Injury》に最強のコモンの座は譲っても良かったけれど、黒という色が強くない。ブロックされない3/2というのは、にらみ合って膠着した盤面を突破するのに最適なクリーチャーだ。

コメント

wish
2014年10月22日23:23

リンクさせていただきました!翻訳がとてもありがたいです♪

酔っ払い
2014年10月23日7:14

翻訳、ありがとうございます。いつも参考にさせてもらってます。
僭越ながら僕の記事でも紹介させていただきました。後編も楽しみにしています。

Taku
2014年10月23日20:50

> wishさん

どうもありがとうございます!
今後も期待に沿えるように翻訳は続けたいと思っています。

> 酔っ払いさん

ご紹介までしていただいたようで、ありがとうございます。
コメントつけてくれるだけでありがたいです。
後編もアップしました!

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