◆ 【ビデオ翻訳】GPオークランドより、LSVとベン・スタークが送るシールドデッキ構築講座
#GPOak Sealed Seminar with LSV and Ben Stark
http://www.channelfireball.com/videos/gpoak-sealed-seminar-with-lsv-and-ben-stark/
Step 1.色分類する
まず色分類をする。
「使えるカード」「使えないカード」を分類することで、構築時間を大幅に短縮できる。
使えない弱いカードの例:《呪文破/Spell Blast》、《破砕/Demolish》、《工匠の呪詛/Artificer’s Hex》
使える強いカードの例:《好機/Opportunity》、《カロニアのハイドラ/Kalonian Hydra》、《影生まれの悪魔/Shadowborn Demon》
練習しておくことで時間を無駄にせずスムーズに仕分けられる。
Step 2.色安定カードを見る
M14には多くないが、とても重要。《ダークスティールの鋳塊/Darksteel Ingot》、《ゆらめく岩屋/Shimmering Grotto》、《新緑の安息所/Verdant Haven》。
除去、爆弾レアなどをタッチしてデッキを強化するのは常道。
色安定カードがなければタッチすることが難しい。
ギルド門などがわかりやすい。1色メインの色と合っているギルド門を使うことでタッチが容易に(例:青緑でディミーア(青黒)のギルド門2枚があれば、黒のカードが3枚あっても沼は1枚程度でいいので事故率が下がる)。
基本土地7:7:3などはできれば避けるべき。初手にメインカラーがなかったり、タッチカラーのカードがあるのに色が合わずに起きる、いわゆる色事故率が上がる。
M14では5色全てをサポートするものしかないが、ほかの環境では2色が出るカードが多い。
Step 3.弱い色を除外する
使えるカードを見ながら、メインカラー候補になる色とそうでない色を見極める。
使用に堪えるカードが7,8枚以下の色や、爆弾レアや除去のない色は外す。
ただし、色をタッチすることは視野に入れること。
シールドではドラフトほどカーブ、フィニッシャー、シナジーを意識しなくていい。無理やりやるのは大体間違い。
シールドで重要なのは、プールの強力なカード、除去を使うこと。ドラフトでは2,3パックでサイドボード用のカードを取ることもあるが、シールドでは「強力なカードを使うこと、除去のある色を選択すること」とにかくこの基本に忠実に。
《精神腐敗/Mind Rot》や《予言/Divination》のようなドラフトではそこそこのカードがシールドではとても強力。M14も例外でない。
LSVにとっては当然《予言/Divination》は爆弾である!いいからドローだ!!
《原始の報奨/Primeval Bounty》のようなカードは他に緑を何も使わなくても使う。
マナカーブが整って見えたり、普通のカードがたくさんある色より、強いカードのある色を選択するのが基本。
相手の強いカードを対処して、こちらの強いカードを対処されないのが勝ち方。
小型クリーチャーは後半ほとんど役に立たないので価値が低い。
《死体運び/Corpse Hauler》などはいい。後半使い出がある。しかし《珊瑚マーフォーク/Coral Merfolk》とかはシールドでは使用に耐えない。2マナを採用するにしても、適当な2/1より、2/1を止める1/3を採用したい。
Step 4.デッキの2色の組み合わせを考える
メインカラーになる色3つくらいから、各色を組み合わせるとどうなるか見てみる。
最もシナジーのあるデッキでなく、最も強いカードの入ったデッキを目指す。
3色をそれぞれ組み合わせてデッキらしくなるものを選ぶ。
当然時間がかかるので、事前に使えるカードを仕分けておくことが重要となる。全体を眺めてみて、強力なカードがあり、かつまあまあのカードもある色を選びたい。
このプロセスに時間がかかるため、カード分類は前もって早めにしておくことが重要。
ラヴニカへの回帰で、プールに《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》と《群れネズミ/Pack Rat》があった幸運なプレイヤーがいたが、緑も強かったためにラクドス(赤黒)とゴルガリ(黒緑)で頭を抱えていたことがあった。
M14の場合には色安定要素が緑なので、緑がまあまあで青に数枚だけ使いたいカードがある場合には緑を優先させる、などの要素も当然ある。
強いカードを別にしていたり、色安定カードを別にしておかないと、このような判断はできない。
Step 5.見直し
《予言/Divination》《予言/Divination》《予言/Divination》
予言を入れ忘れてないかい?
・プールの強いカードを使っているか
・フィニッシャーになるカードは十分あるか
・アドバンテージを稼げるカードはあるか
・タッチしている色があれば、その色は上の3つのいずれかにプラスになるか
《珊瑚マーフォーク/Coral Merfolk》を《巨大化/Giant Growth》してダメージを叩きこむというのは、シールドの戦略ではない。
ドラフトのビートダウンが作れるようなプールはまずない。
シールドの強いデッキは、ドラフトの強力なデッキとは異なるため、直観的に異なる。
陥りやすい罠
・最もありがちなのは、先手を取るという罠
構築やドラフトとは違う。シールドで先に多くのカードにアクセスできるのは明らかなアドバンテージである。
先手のメリットは、お互いにノーガードで殴りあった場合相手を先に倒せること。構築だと全体除去で流されたり《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》される前に殴りきるなどでおなじみ。後手のメリットは、一枚多くカードを引けることである。
毎ターンカードを引くことが結果的に、2マナのクリーチャーを出したり土地を並べることにつながる。ドラフトなら2マナを厚くすることで手札から2マナのカードを出せばいい。シールドではそうはいかないので、結果的に8枚カードがある方が少ない2マナを出せる確率はずっと高い。ほぼあらゆる環境で、先にドローできる後手を選ぶべき。4マナまでのクリーチャーで殴りきるからといって先手を選ぶ必要はない。2マナが8枚、強化呪文が5枚あるとかでもない限り先手を選ぶことはない。
《轟くベイロス/Rumbling Baloth》を先手4ターン目に出すのに拘らず、後手で土地を引きこむ確率を上げ、より確実にベイロスを出せばいい。11枚より12枚の方が森も2枚引ける可能性が高い。15%の先手ブン回りより、85%の普通のゲームのことを考えよう。全勝する必要はない。ただできるだけ勝てばいい。
最も理解が難しい部分。
・カードアドバンテージを稼ぐ手段が少ないこと
中~終盤に手札が2,3枚になってしまうと、押し返すのが困難になる。
特にシールドではみんな除去や強力なカードを使うため顕著。
いつでも長期戦に備えたい。ライブラリーが尽きるほどではないが、7~9ターンだろうか。完全な土地事故ではないが、ドローもパッとしない、でも相手からのプレッシャーも大したことない。そんな平凡なゲームを想定すべし。そんなときにカードを2枚追加で引いていたり、《精神腐敗/Mind Rot》で2枚手札を落としていればわかりやすいアドバンテージになる。シールドで想定するのはそういう地味なゲーム。シールドの勝ち筋というのは、相手の超強力なカードを打消しや除去で対処して、相手の3マナ、5マナのクリーチャーに対してこちらの僅かに上回る4マナ、6マナのクリーチャーで戦う。そういう平凡なゲームこそがシールド。
・最もハメられた罠?《鞭打ちの罠/Whiplash Trap》かな。
・除去を無駄にすること
ドラフトではマナカーブを意識しなければならないため、3ターン目に出てきた《ルートワラ/Rootwalla》を《破滅の刃/Doom Blade》で対処するようなことも起きるが、シールドでは大体《セラの天使/Serra Angel》やら、もっと強い《カロニアのハイドラ/Kalonian Hydra》のようものが出てくる。
《ルートワラ/Rootwalla》に《破滅の刃/Doom Blade》を使っていては、相手の爆弾レアの前に敗北が近づく。
《ルートワラ/Rootwalla》は確かに強いが、4点ダメージを受けつつ4マナ5マナとこちらの重いクリーチャーで相打てばいい。
GPの後半、5-1や6-1ラインなどになれば相手も当然強いわけで、強いレアがあることを常に念頭に置いて、除去の温存が重要となる。
・オーラを過大評価しない
M14では強力なオーラ、《吸血鬼の印/Mark of the Vampire》、《トロール皮/Trollhide》、《シヴの抱擁/Shiv’s Embrace》のような強力なものが多く環境初期は強く使われることが多いが、M14に限ってはそうでもない。というかオーラ弱い。脆い。
一般的にオーラはドラフトの方が強力。シールドの方が相手の持っている除去枚数の平均値が高いため。ドラフトではまず除去を争って確保して色を決めるため、大体3手くらいで消える。だがシールドでは除去をありったけ使うのが普通。シールドはドラフトよりゲームが長引くことが多いため、カードアドバンテージが重要なのも拍車をかける。オーラをつけたクリーチャーに対処されると2:1交換を取られて負けが近づく。なのでシールドではできるだけオーラを入れることは避けたい。前に言ったような、2マナ域が7枚あるようなビートダウンデッキで総攻撃をかけるのでない限りは使いたくない。《吸血鬼の印/Mark of the Vampire》や《シヴの抱擁/Shiv’s Embrace》のような強力なものでも、強いには強いが、積極的に使いたくはないし、強力なオーラがあるからといって色を決めるべきではない。オーラより《破砕/Demolish》とか微妙なカードのがマシだというのではないけれど、過大評価しないように。対処されることを考えること。相手はまず除去を持っていると思っていい。
サイドボードからの投入は検討していい。赤緑の相手に《吸血鬼の印/Mark of the Vampire》がついて《チャンドラの憤慨/Chandra’s Outrage》圏外になったりすれば非常に強力。でも普通は、《平和な心/Pacifism》や《時の引き潮/Time Ebb》で対処されることをまず念頭に置くべき。
特にM14は、《血の儀式文/Liturgy of Blood》、《閉所恐怖症/Claustrophobia》、《泥沼病/Quag Sickness》など除去が豊富。オーラをつければ《反逆の行動/Act of Treason》などですら除去っぽくなってしまう。
サイドボード
サイドボーディングで元と違うデッキに仕上げることを恐れない。
好例としてよく持ち出されるのが、GPボストンでベン・スターク(Ben Stark)はトーナメント中、デッキをサイドボーディングで4つくらいの異なるデッキに変貌させていた。
そのときのプールは全くダメダメだった。相手のカードへの対抗策はあったが4色に散っていて、相手の色を見てから完全に変えていた。相手が赤ければ、デッキを白くして《安全な道/Safe Passage》をありったけ持ちこむ。青ければ《垂直落下/Plummet》を2枚イン。劇的に変えることはあまりなくても、まあまあの色があるなら時間をつかって検討すべき。やり得。検討しても損はしないから時間をかけてみよう。相手の飛行が厳しいなら、デッキを緑にして《命取りの出家蜘蛛/Deadly Recluse》やら《垂直落下/Plummet》、《大蜘蛛/Giant Spider》を入れてみよう。
相手に《破滅の刃/Doom Blade》が2枚あって、こちらのフィニッシャーが《セラの天使/Serra Angel》2枚だとしたら、1枚しかない《センギアの吸血鬼/Sengir Vampire》の方が優秀ということはある。逆に《センギアの吸血鬼/Sengir Vampire》が出てきて、こちらは《破滅の刃/Doom Blade》握ってにらめっこということはできれば避けたい。
《垂直落下/Plummet》などは入れるべきかそうでないか明確なのに対して、たとえば《チャンドラの憤慨/Chandra’s Outrage》2枚に対してタフネス5のクリーチャーを投入するなどは、多くの人が考えもしないところだが、シールドでは選択肢があるのだから考慮すべき。
ドラフトのサイドボード要員、たとえば《垂直落下/Plummet》や《真面目な捧げ物/Solemn Offering》などは、シールドだとずっとメインデッキに採用可能なことが多い。ゲームが長引けば長引くほど、これらを活用できる限定的な状況が来る可能性は高い。ドラフトだとメインに《垂直落下/Plummet》を差してたら、相手がビートダウンで垂直落下を抱えて死にました、なんてことも起きるが、シールドならゲームが長引きやすい性格上、相手のデッキに飛行が少なかったとしても、その数少ない飛行を落とせることもかなり多い。
勿論相手に飛行がいなければ抜けばいい。だがメインに入れてもドラフトほど振れ幅は大きくない。ゲームが長引けば長引くほど、飛行を相手が引いてくる確率は上がる。役に立たない瞬間より、役に立ってしかも強力という瞬間はずっと多い。あといい例は《否認/Negate》。ドラフトではまずメインに入れない。相手の《エルフの神秘家/Elvish Mystic》→《ルートワラ/Rootwalla》と動かれたときに《否認/Negate》が手札にあってほしくない。でもシールドでは、相手がクリーチャーを並べて《溶岩の斧/Lava Axe》、とかやってくることは少ない。《否認/Negate》があれば《堕落/Corrupt》やら《夜の群れの雄叫び/Howl of the Night Pack》やら強力なものを打ち消せることは多い。用途の限定的なカードも、シールドでは価値が高い。
《レインジャーの悪知恵/Ranger’s Guile》は好例。皆が除去を優先して投入するので、こちらは悪知恵でフィニッシャーを守れば勝てる。
ドラフトでは修正値の高い《巨大化/Giant Growth》のが有力候補になることも多いが、シールドでは相手の除去からこちらの《カロニアのハイドラ/Kalonian Hydra》だとか《テューンの大天使/Archangel of Thune》だとか守ってやれば勝てる。1マナ浮かせて6マナ出せるようになってから出したい。出るのが1ターン遅れても十分に勝てる。
用途の限定的なカードが強いのは、ドラフトだとたとえば飛行の多いデッキを作っている人が卓に3人、4人など限定されても、シールドでは全員が持っている可能性がぐっと高いため。
Q&A
後編に続く
#GPOak Sealed Seminar with LSV and Ben Stark
http://www.channelfireball.com/videos/gpoak-sealed-seminar-with-lsv-and-ben-stark/
Step 1.色分類する
まず色分類をする。
「使えるカード」「使えないカード」を分類することで、構築時間を大幅に短縮できる。
使えない弱いカードの例:《呪文破/Spell Blast》、《破砕/Demolish》、《工匠の呪詛/Artificer’s Hex》
使える強いカードの例:《好機/Opportunity》、《カロニアのハイドラ/Kalonian Hydra》、《影生まれの悪魔/Shadowborn Demon》
練習しておくことで時間を無駄にせずスムーズに仕分けられる。
Step 2.色安定カードを見る
M14には多くないが、とても重要。《ダークスティールの鋳塊/Darksteel Ingot》、《ゆらめく岩屋/Shimmering Grotto》、《新緑の安息所/Verdant Haven》。
除去、爆弾レアなどをタッチしてデッキを強化するのは常道。
色安定カードがなければタッチすることが難しい。
ギルド門などがわかりやすい。1色メインの色と合っているギルド門を使うことでタッチが容易に(例:青緑でディミーア(青黒)のギルド門2枚があれば、黒のカードが3枚あっても沼は1枚程度でいいので事故率が下がる)。
基本土地7:7:3などはできれば避けるべき。初手にメインカラーがなかったり、タッチカラーのカードがあるのに色が合わずに起きる、いわゆる色事故率が上がる。
M14では5色全てをサポートするものしかないが、ほかの環境では2色が出るカードが多い。
Step 3.弱い色を除外する
使えるカードを見ながら、メインカラー候補になる色とそうでない色を見極める。
使用に堪えるカードが7,8枚以下の色や、爆弾レアや除去のない色は外す。
ただし、色をタッチすることは視野に入れること。
シールドではドラフトほどカーブ、フィニッシャー、シナジーを意識しなくていい。無理やりやるのは大体間違い。
シールドで重要なのは、プールの強力なカード、除去を使うこと。ドラフトでは2,3パックでサイドボード用のカードを取ることもあるが、シールドでは「強力なカードを使うこと、除去のある色を選択すること」とにかくこの基本に忠実に。
《精神腐敗/Mind Rot》や《予言/Divination》のようなドラフトではそこそこのカードがシールドではとても強力。M14も例外でない。
LSVにとっては当然《予言/Divination》は爆弾である!いいからドローだ!!
《原始の報奨/Primeval Bounty》のようなカードは他に緑を何も使わなくても使う。
マナカーブが整って見えたり、普通のカードがたくさんある色より、強いカードのある色を選択するのが基本。
相手の強いカードを対処して、こちらの強いカードを対処されないのが勝ち方。
小型クリーチャーは後半ほとんど役に立たないので価値が低い。
《死体運び/Corpse Hauler》などはいい。後半使い出がある。しかし《珊瑚マーフォーク/Coral Merfolk》とかはシールドでは使用に耐えない。2マナを採用するにしても、適当な2/1より、2/1を止める1/3を採用したい。
Step 4.デッキの2色の組み合わせを考える
メインカラーになる色3つくらいから、各色を組み合わせるとどうなるか見てみる。
最もシナジーのあるデッキでなく、最も強いカードの入ったデッキを目指す。
3色をそれぞれ組み合わせてデッキらしくなるものを選ぶ。
当然時間がかかるので、事前に使えるカードを仕分けておくことが重要となる。全体を眺めてみて、強力なカードがあり、かつまあまあのカードもある色を選びたい。
このプロセスに時間がかかるため、カード分類は前もって早めにしておくことが重要。
ラヴニカへの回帰で、プールに《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》と《群れネズミ/Pack Rat》があった幸運なプレイヤーがいたが、緑も強かったためにラクドス(赤黒)とゴルガリ(黒緑)で頭を抱えていたことがあった。
M14の場合には色安定要素が緑なので、緑がまあまあで青に数枚だけ使いたいカードがある場合には緑を優先させる、などの要素も当然ある。
強いカードを別にしていたり、色安定カードを別にしておかないと、このような判断はできない。
Step 5.見直し
予言を入れ忘れてないかい?
・プールの強いカードを使っているか
・フィニッシャーになるカードは十分あるか
・アドバンテージを稼げるカードはあるか
・タッチしている色があれば、その色は上の3つのいずれかにプラスになるか
《珊瑚マーフォーク/Coral Merfolk》を《巨大化/Giant Growth》してダメージを叩きこむというのは、シールドの戦略ではない。
ドラフトのビートダウンが作れるようなプールはまずない。
シールドの強いデッキは、ドラフトの強力なデッキとは異なるため、直観的に異なる。
陥りやすい罠
・最もありがちなのは、先手を取るという罠
構築やドラフトとは違う。シールドで先に多くのカードにアクセスできるのは明らかなアドバンテージである。
先手のメリットは、お互いにノーガードで殴りあった場合相手を先に倒せること。構築だと全体除去で流されたり《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》される前に殴りきるなどでおなじみ。後手のメリットは、一枚多くカードを引けることである。
毎ターンカードを引くことが結果的に、2マナのクリーチャーを出したり土地を並べることにつながる。ドラフトなら2マナを厚くすることで手札から2マナのカードを出せばいい。シールドではそうはいかないので、結果的に8枚カードがある方が少ない2マナを出せる確率はずっと高い。ほぼあらゆる環境で、先にドローできる後手を選ぶべき。4マナまでのクリーチャーで殴りきるからといって先手を選ぶ必要はない。2マナが8枚、強化呪文が5枚あるとかでもない限り先手を選ぶことはない。
《轟くベイロス/Rumbling Baloth》を先手4ターン目に出すのに拘らず、後手で土地を引きこむ確率を上げ、より確実にベイロスを出せばいい。11枚より12枚の方が森も2枚引ける可能性が高い。15%の先手ブン回りより、85%の普通のゲームのことを考えよう。全勝する必要はない。ただできるだけ勝てばいい。
最も理解が難しい部分。
・カードアドバンテージを稼ぐ手段が少ないこと
中~終盤に手札が2,3枚になってしまうと、押し返すのが困難になる。
特にシールドではみんな除去や強力なカードを使うため顕著。
いつでも長期戦に備えたい。ライブラリーが尽きるほどではないが、7~9ターンだろうか。完全な土地事故ではないが、ドローもパッとしない、でも相手からのプレッシャーも大したことない。そんな平凡なゲームを想定すべし。そんなときにカードを2枚追加で引いていたり、《精神腐敗/Mind Rot》で2枚手札を落としていればわかりやすいアドバンテージになる。シールドで想定するのはそういう地味なゲーム。シールドの勝ち筋というのは、相手の超強力なカードを打消しや除去で対処して、相手の3マナ、5マナのクリーチャーに対してこちらの僅かに上回る4マナ、6マナのクリーチャーで戦う。そういう平凡なゲームこそがシールド。
・最もハメられた罠?《鞭打ちの罠/Whiplash Trap》かな。
・除去を無駄にすること
ドラフトではマナカーブを意識しなければならないため、3ターン目に出てきた《ルートワラ/Rootwalla》を《破滅の刃/Doom Blade》で対処するようなことも起きるが、シールドでは大体《セラの天使/Serra Angel》やら、もっと強い《カロニアのハイドラ/Kalonian Hydra》のようものが出てくる。
《ルートワラ/Rootwalla》に《破滅の刃/Doom Blade》を使っていては、相手の爆弾レアの前に敗北が近づく。
《ルートワラ/Rootwalla》は確かに強いが、4点ダメージを受けつつ4マナ5マナとこちらの重いクリーチャーで相打てばいい。
GPの後半、5-1や6-1ラインなどになれば相手も当然強いわけで、強いレアがあることを常に念頭に置いて、除去の温存が重要となる。
・オーラを過大評価しない
M14では強力なオーラ、《吸血鬼の印/Mark of the Vampire》、《トロール皮/Trollhide》、《シヴの抱擁/Shiv’s Embrace》のような強力なものが多く環境初期は強く使われることが多いが、M14に限ってはそうでもない。というかオーラ弱い。脆い。
一般的にオーラはドラフトの方が強力。シールドの方が相手の持っている除去枚数の平均値が高いため。ドラフトではまず除去を争って確保して色を決めるため、大体3手くらいで消える。だがシールドでは除去をありったけ使うのが普通。シールドはドラフトよりゲームが長引くことが多いため、カードアドバンテージが重要なのも拍車をかける。オーラをつけたクリーチャーに対処されると2:1交換を取られて負けが近づく。なのでシールドではできるだけオーラを入れることは避けたい。前に言ったような、2マナ域が7枚あるようなビートダウンデッキで総攻撃をかけるのでない限りは使いたくない。《吸血鬼の印/Mark of the Vampire》や《シヴの抱擁/Shiv’s Embrace》のような強力なものでも、強いには強いが、積極的に使いたくはないし、強力なオーラがあるからといって色を決めるべきではない。オーラより《破砕/Demolish》とか微妙なカードのがマシだというのではないけれど、過大評価しないように。対処されることを考えること。相手はまず除去を持っていると思っていい。
サイドボードからの投入は検討していい。赤緑の相手に《吸血鬼の印/Mark of the Vampire》がついて《チャンドラの憤慨/Chandra’s Outrage》圏外になったりすれば非常に強力。でも普通は、《平和な心/Pacifism》や《時の引き潮/Time Ebb》で対処されることをまず念頭に置くべき。
特にM14は、《血の儀式文/Liturgy of Blood》、《閉所恐怖症/Claustrophobia》、《泥沼病/Quag Sickness》など除去が豊富。オーラをつければ《反逆の行動/Act of Treason》などですら除去っぽくなってしまう。
サイドボード
サイドボーディングで元と違うデッキに仕上げることを恐れない。
好例としてよく持ち出されるのが、GPボストンでベン・スターク(Ben Stark)はトーナメント中、デッキをサイドボーディングで4つくらいの異なるデッキに変貌させていた。
そのときのプールは全くダメダメだった。相手のカードへの対抗策はあったが4色に散っていて、相手の色を見てから完全に変えていた。相手が赤ければ、デッキを白くして《安全な道/Safe Passage》をありったけ持ちこむ。青ければ《垂直落下/Plummet》を2枚イン。劇的に変えることはあまりなくても、まあまあの色があるなら時間をつかって検討すべき。やり得。検討しても損はしないから時間をかけてみよう。相手の飛行が厳しいなら、デッキを緑にして《命取りの出家蜘蛛/Deadly Recluse》やら《垂直落下/Plummet》、《大蜘蛛/Giant Spider》を入れてみよう。
相手に《破滅の刃/Doom Blade》が2枚あって、こちらのフィニッシャーが《セラの天使/Serra Angel》2枚だとしたら、1枚しかない《センギアの吸血鬼/Sengir Vampire》の方が優秀ということはある。逆に《センギアの吸血鬼/Sengir Vampire》が出てきて、こちらは《破滅の刃/Doom Blade》握ってにらめっこということはできれば避けたい。
《垂直落下/Plummet》などは入れるべきかそうでないか明確なのに対して、たとえば《チャンドラの憤慨/Chandra’s Outrage》2枚に対してタフネス5のクリーチャーを投入するなどは、多くの人が考えもしないところだが、シールドでは選択肢があるのだから考慮すべき。
ドラフトのサイドボード要員、たとえば《垂直落下/Plummet》や《真面目な捧げ物/Solemn Offering》などは、シールドだとずっとメインデッキに採用可能なことが多い。ゲームが長引けば長引くほど、これらを活用できる限定的な状況が来る可能性は高い。ドラフトだとメインに《垂直落下/Plummet》を差してたら、相手がビートダウンで垂直落下を抱えて死にました、なんてことも起きるが、シールドならゲームが長引きやすい性格上、相手のデッキに飛行が少なかったとしても、その数少ない飛行を落とせることもかなり多い。
勿論相手に飛行がいなければ抜けばいい。だがメインに入れてもドラフトほど振れ幅は大きくない。ゲームが長引けば長引くほど、飛行を相手が引いてくる確率は上がる。役に立たない瞬間より、役に立ってしかも強力という瞬間はずっと多い。あといい例は《否認/Negate》。ドラフトではまずメインに入れない。相手の《エルフの神秘家/Elvish Mystic》→《ルートワラ/Rootwalla》と動かれたときに《否認/Negate》が手札にあってほしくない。でもシールドでは、相手がクリーチャーを並べて《溶岩の斧/Lava Axe》、とかやってくることは少ない。《否認/Negate》があれば《堕落/Corrupt》やら《夜の群れの雄叫び/Howl of the Night Pack》やら強力なものを打ち消せることは多い。用途の限定的なカードも、シールドでは価値が高い。
《レインジャーの悪知恵/Ranger’s Guile》は好例。皆が除去を優先して投入するので、こちらは悪知恵でフィニッシャーを守れば勝てる。
ドラフトでは修正値の高い《巨大化/Giant Growth》のが有力候補になることも多いが、シールドでは相手の除去からこちらの《カロニアのハイドラ/Kalonian Hydra》だとか《テューンの大天使/Archangel of Thune》だとか守ってやれば勝てる。1マナ浮かせて6マナ出せるようになってから出したい。出るのが1ターン遅れても十分に勝てる。
用途の限定的なカードが強いのは、ドラフトだとたとえば飛行の多いデッキを作っている人が卓に3人、4人など限定されても、シールドでは全員が持っている可能性がぐっと高いため。
Q&A
後編に続く
コメント
これすごくいい記事だと思います。わかりやすいし滅茶苦茶ためになる!
非常にタイムリーな神記事ですね。
そんでやっぱり《予言》ですよね!!!
翻訳お疲れ様です。
単純に知らなかったことも多く、本当にためになった翻訳でした。ありがとうございます。
ありがとうございます!
リンクさせていただきます(*ゝω・*)ノ
最近、シールドやってないので、無茶ためになりました。
後半も待ってます
0-3を積み上げる自分と違ってスゴイナー
> dds666さん
ありがとうございます!
自分も訳していて、改めて勉強になったことがかなりありました。
プールに文句言ってふてくされる前に努力しないとですね。
> ああああさん
よもや日曜日がPTQで、しかもフォーマットがM14シールドだとは思わなんだ。
知ってから見るとちょっとあざとかったですねwwwでも反響があったので嬉しいです。
> みやじ~さん
どうもどうも。ありがとうございます!
> listenerさん
そうです!殿堂入りを果たした二人です!
そしてそこかしこに散りばめられている《予言/Divination》コメント。M14では評価高いですが、やっぱりLSVはドロージャンキーでないとね!
ありがとうございます。
自分も訳していてかなり勉強になりました。
言語化って大事。
> madrugadaさん
まったく同意!
シールド進んでやりたいとはあまり思わなかったんですが、唸らされる箇所がいくつもありました。
> ポルカさん
ありがとうございますー。
こちらからもリンク返しますね!
> 将軍さん
やはり言語化ってとても大事だと思います。
自分もかなり勉強になりました。
いやぁ、やって良かったなあ。
コメントありがとうございます!
> VMさん
自分もそう思います!
プレリリースシールドの参考などになるかと思ったんですが、実はM14まだプレイする機会あったので予想以上の反応が嬉しいです。
> グリ太郎@ダイスさん
あざーす!
今日アップ予定ですよ!
> Dさん
極めてねーし!ドラフトたくさんしたってだけだし!
いいからドラフトすんぞ!!
これを全部聞き取って訳しきるのは大変だと思いますが、二人の会話をキレイに情報としてまとめているのが見比べてよく分かりますので、後半も楽しみにしています。
ドラフトとシールドの違いを例に出してわかりやすく指摘していて
とてもためになります。翻訳ありがとうございます。
どうもありがとうございます!後編もアップしました。
本当に、動画も合わせてみるとより楽しめると思います。英語聞き取れる人には今回、ジョークも少ないし需要は微妙ですがwww
> オレンジ君さん
自分もついついドラフトの延長戦で考えがちですね。
ここまで言語化しているものを訳すのは本当にためになりました。